みどりはいい [ニュースレター:2024年四月号] / by kaz yoneda

東大寺大仏殿 
(image credit: Creative Commons)

5月4日は「みどりの日」。日本では、その名の通り、自然とふれあい、大地の恵みに感謝する日である。天皇を直接名指しすることなく、彼の植物研究を称えるために改名され、2007年に1週間ずれて「昭和の日」となった。しかし、実際には日本のゴールデンウィークを延長する日になっている。(同様に、世界の多くの地域では4月26日が「アーバー・デー」であり、植樹が奨励されている。)

それにちなんで、建築家として - 現代の木造建築に関して、特に日本の文脈で - 時事的な視点をあげたい。2021年における日本の住宅建築の実に約58.7%が木造建築だ。現在、日本のほとんどの住宅は木造で建てられており、既存の一戸建て住宅の約90%を占めている。

欧米では、住宅以外にグルラムやCLT構造の利用が勢いを増している。より環境に優しい代替案が存在するにもかかわらず、コンクリートやスチールを安易に使用するわけにはいかないからだ。日本の建築にインスピレーションを求めるなら、刺し子や宮大工、焼き杉板などの素晴らしさを称賛するのは簡単だが、現代のスポーツ・スタジアムやオフィス・ビルも建築家が日常空間や公共の場に木材をどのように取り入れることができるかを示すものとして、評価するべきである。

東大寺は、1998年に建設された伊東豊雄の野球場「大館樹海ドーム(ニプロハチ公ドーム)」のような建築物に追い抜かれるまで、世界最大の木造建築物だった。2022年には、地元産の木材を使用した「ロイヤルパークキャンバス札幌大通パークホテル」が建設された。今年、日本の保険大手である東京海上ホールディングスは、2028年までに現在の本社ビルを木造の高層ビルに建て替える予定と発表した。レンゾ・ピアノ・ビルディング・ワークショップによるこの20階建ての高層ビルは、子会社である東京海上日動火災保険の新本社になる予定で、完成時には世界最大の木造ハイブリッド建築になると予想されている。

大正時代の古民家
(写真提供: Kaz)

東京の木造率は37.2%に過ぎない(首都圏の木造率は49%)。関東大震災では、東京の約40%が焼失し、死者の90%以上が火災によるものだった。当時の建物は耐震性や耐火性に欠け、被害を拡大させた。さらに、第二次世界大戦の東京大空襲により、木造建築の60%が焼失した。これらの悲劇の記憶は、建築基準法そのものに焼き付いている。避難経路や防火区画の計画は、東京の都市計画に組み込まれている。

しかし、現代の防火・抑制、予防、安全性によって、木造建築の新たな可能性が想像されている。東京で計画中の70階建てW350 「プライスクレイパー」は、2041年完成予定の世界一高い木造計画だ。 伊東豊雄が設計した「水戸市民会館」は、"日本では初めての木造デザイン"を採用し、耐火構造木材の多用を通して、20メートルを超える大型トラス構造に初めて使用された。

隈研吾、新国立競技場
(写真提供: Kaz)

これら新鮮な試みは、日本の森林管理に対する新しい考え方にも及んでいる。隈研吾は、著書『My Life as an Architect in Tokyo』の中で、部分的に木材を使用した新国立競技場の入念な素材選びが、いかに原産地での知的な素材管理から始まったかを語っている。歴史的に見ると、隈氏は「木を植え、建材として伐採し、また植えるというサイクルを繰り返すことで、日本は木材資源を維持することができた。しかし20世紀になると、コンクリートや鉄が建築の主役となり、木材を使うにしても安価な海外産に頼るようになった。その結果、日本の森林は荒廃していった。樹木は大気中の二酸化炭素を吸収するが、森林が放棄されるとその能力が低下する。」と述べている(1)。こんにち、日本国土の約70%を森林が占めているため、小規模な自営の木材伐採が不可欠な森林管理手段となっている。日本の木造建築の新たな重要性を強調するために、隈氏の東京スタジアムでは47都道府県の杉が使われている。

現在進行中の気候危機を考えると、世界の未来や自然界について私たちが議論するとき、皮肉や悲観的になりがちだ。アメリカ先住民のクィア詩人、デミアン・ディネ・ヤジがヨーロッパ・西洋の「黙示録のロマン化と中毒」について述べているように、大災害を所与のものとして受け入れている以上、より良い別の未来を想像することは難しい。この「みどりの日」に、私たち建築家は、人類の滅亡(あるいはより長い休暇)について憶測するのではなく、より良い、より緑豊かな未来を想像し、デザインする方法について真剣に考えることが必要とされているのではないか。


典拠:
(1) Kengo Kuma, My Life as an Architect in Tokyo. London: Thames & Hudson, 2021, 43.


執筆(英文):グレゴリー・セルヴェータ

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それでは、次回をお楽しみに!